2022年6月10日にリリースされた「バグ」
この曲は、人気リズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ』(以下、プロセカ)のためにボカロP・かいりきベア氏が書き下ろした楽曲となっています。
一聴しただけで分かるダークな世界観、さらにクセになって耳から離れないメロディーが話題となり大人気の曲です。
PVを見ても、どこか「怖い」と感じる方も多いでしょう。
本来なら怖いものから距離を置きたくなるのが人間という生き物です。
しかしなぜ本曲は一度聞いた我々の心を掴んで離さないのでしょうか?
この記事では「バグ」に込められた歌詞の意味を考察し、解釈を深めていきます。
目次
バグの歌詞はゲームの世界観とリンクしている
プロセカは「人々の本当の想いを映し出す」というコンセプトのもと、ゲーム内で様々な人間模様が展開されています。
バグは「25時、ナイトコードで(通称:ニーゴ)」というゲーム内ユニットのために作られた曲です。
〇25時、ナイトコードで。(ニーゴ)のメンバー
・宵崎奏
・朝比奈まふゆ
・東雲絵名
・暁山瑞希
さらに、鏡音レンがニーゴのセカイに初登場。
ニーゴビジュアルに身を包んだ鏡音レンは「ニーゴレン」と称され、別セカイの鏡音レンと区別されています。
ゲーム内イベント「迷い子の手を引く、そのさきには」のために書き下ろされた楽曲ということもあって、歌詞はゲームのセカイ観と痛烈にリンクしています。
バグの歌詞を徹底考察&解釈
バグの歌詞を考察していきますが、正直とても暗くて痛々しい内容です。
人によっては「しんどすぎ…」と落ち込んでも仕方ありません。そこを了承したうえで読み進めてください。
また、ゲームイベントのネタバレも含みますので、現在ストーリーを進めている方は、どうかストーリーを終えてから読むことをおすすめします。
パラノイア=人への疑念
迷子迷子 真っ只中 さあ パ パ パラ パーラノーイ「ア」
「迷子真っ只中」と歌っていることから、主人公の苦難が見え隠れします。
イベントの内容から察するに、この迷子とはまふゆのことでしょう。
まふゆは母の期待に応えるため、優等生としてふるまってきました。
しかし「ふるまっている」というのは、イコールで自分を偽っているということにもなります。
今のまふゆは本当の自分を見つけられない迷子なのです。
また、パラノイアとは不安や恐怖の影響で他人に懐疑心を抱いてしまう精神病のことです。
まふゆはニーゴメンバーと触れ合う中で、母親からは感じなかった”暖かさ”を知ります。
そして同時に、今まで愛情だと信じていた母親の言動に対して疑念を抱いてしまうのです。
ゲーム内でもまふゆは
「お母さんと、奏達は・・・・・・何が違うの?」
「どうしてお母さんといると冷たく感じるんだろう」
と話しており、彼女の中に”母親への疑問”が生まれていることは確かです。
楽曲では、こんな母への懐疑心をパラノイアと称して歌っているのかもしれません。
まふゆが本当に精神病に掛かってしまったわけではなく、比喩的に使われていると考えた方が妥当でしょう。
いらない心を切り取る
ギコギコ MY HEART(こころ) 剪定
剪定とは、木の枝を切って見た目を良くする行為のこと。
「MY HEART=まふゆの心」と考えると、まふゆ自身が抱いている余計な感情を捨てるという意味に解釈できます。
まふゆは優等生と演じる生き方のみをしてきました。本当は心の底に”本来の自分”がいるにも関わらず。
周りから、いい子と思われるためには”本来の自分”は邪魔な存在です。だって素を見せたらいい子と思われなくなりそうだから。
心を剪定するというのは、出したい自分を排除し「周りに合わせ続ける」ということでしょう。
また、まふゆの母親の行為も剪定と言えます。
まふゆの交友関係を制限しようとし、自分が思う理想の娘を作り上げているのです。
つまり、(自分が思う)まふゆの邪魔な部分を切り取っているということ。
心の剪定をしているのはまふゆ自身ですが、そうさせたキッカケは紛れもなく母親なのです。
母親の理想であり続ける人生…。
まふゆにとって苦しいはずなのに、苦しいという感情まで捨てようとする彼女の不憫さが垣間見えます。
ギコギコという表現からも、スパッと断ち切れない感情の難しさが見えてきますね。
SADとパラノイド
退路 退路 断った絡まった~ぱーらのーい「ド」
退路とは、まふゆが母親の敷いたレールから逃げる道のことです。
まふゆはイベント内で、学校の模試に参加せず遊園地へと遊びに行きます。
母親に「具合が悪くて模試にいけなかった」と言ってごまかしますが、母親は学校に連絡して娘の嘘を見破ってしまうのです。
まふゆが必死に作った「母親から逃げる道」すら塞がれてしまう…。
ただまふゆが可哀想でなりません。
悲しみ(SAD)に明け暮れるまふゆ。そんな彼女の心は「空っぽ」になってしまいます。
また、パラノイドとは強烈な懐疑心という意味を持ちます。
悲しくて突っ伏したまふゆが抱いたのは、母親への「疑念」だったのです。
自分の才能・価値とは
タ タ タグ 才能のタグ
もうまふゆの心は崩壊寸前なのかもしれません。
「バグ」という歌詞からも、まふゆ自身の中で何かが壊れてしまった様子が伺えます。
そして「才能のタグ」とは、周りから「いい子」として認知されている自分のこと。
店頭に並べられている服に付いている値札のように、表向きの価値をタグとして表現していると考えられます。
まふゆに付いている才能のタグは自分で付けたものではありません。
母親の言いなりになった結果、付いてしまったものなのです。
苦しくなるのはもう嫌
感情は剥グ~発症「クルシイ」は 嫌嫌嫌 嫌嫌嫌
「感情は剥ぐ」とは、まふゆが本来の考えを捨てるということ。
母親の言いなりになり、それ以外の生き方を知らなかったまふゆの思考回路が表現されています。
決してまふゆは思考停止していたわけではありません。いい子を演じる以外の生き方が分からなかったのです。
しかし、ニーゴメンバーと出会うことで母親への疑念が生まれていきます。
自分を愛情で包んでいると信じていた母への疑い。これはまふゆにとって”クルシイ”以外の何物でもありません。
何度も「嫌!」と叫ぶ歌詞から、まふゆの葛藤が見えてきます。
母親へ疑いを持つのが「嫌」なのか、それとも母親の言いなりになる人生が「嫌」なのか。
ひょっとしたら両方の意味を持ち合わせているのかもしれません。
今まで機械的に生きてきたまふゆにとって、初めて感情が爆発する瞬間です。
また、この歌詞はまふゆだけでなく奏にも当てはまる部分があります。
・感情は剥グ
⇒父親譲りの作曲センスがゆえに「作らないといけない」と自分を追い込む。その結果、感情が消える場面がゲーム内に存在
・「クルシイ」は嫌
⇒奏は父親を陥れた過去がある。そんな過去は奏にとって「クルシイ」
絶望に落とされるサビ
まあ!絶叫な感情落下 パッパラノーイ「ア」~沈めユメユメ
「絶叫な感情落下」とはジェットコースター並みの速さで感情が沈んでいくことだと考えられます。
本来ならジェットコースターは沈んだあとに浮くはずです。
しかしこの歌詞では落下の部分しか表現されていません。つまり、ひたすらに落ちていく心の様子を表していると推測できます。
「溺れ声上げてはぐるぐる」という歌詞からは、溺れるほど潜った感情が行き場を失う様が伺えます。
浮かぶことはない負の感情は重くなりすぎたのです。
深海のような場所で、まふゆ自身でもコントロールできない想いがぐるぐると回っているのでしょう。
まふゆの状況から察するに「絶体絶命」とは、母親の呪縛から逃げられないことを指していると考えられます。
「沈め」という言葉は、母親の気持ちを代弁したものかもしれません。
自我を出し始めたまふゆに対して「そんな感情は沈んでしまえ!」と訴えかけているよう…。
やっと気付いた自分の答え
さあ バ バ バグさ バグバグ
まふゆは母親からの”歪んだ愛情・慈愛”に対して「的ハズレ」と言い切ります。
今までは当たり前と思っていた母の行動が、自分にとって嫌なものだと自覚し始めたのです。
まふゆは「看護師になりたい」「音楽をやりたい」という想いを母にぶつけても、全て否定されてきました。
それも母が自分を思っているからこそと信じてきましたが、いよいよ気付いたのです。
そう、自分が操り人形になっていることに。愛情への懐疑心に。
しかし、まふゆ自身の「答え」は未だに定まっていません。
それもそのはず。自分が築き上げてきた価値観や考え方が一気に崩壊しようとしているのですから。
グチャグチャになってしまう心
狂 狂(くるくる) ぱっかーん 警報 待って無理 ぐるぐるせーので回れ~エンドレス病み…?
「狂狂ぱっかーん」とは感情がグチャグチャになっている様子を表しています。
単に「くるくる」としなかったのは「自分が壊れて狂っていく」という意味も込めたかったからではないでしょうか。
狂っていく自分に警報を鳴らして自我を保とうとするも、止めることが出来ません。
まふゆは「いい子を演じること」から逃げようとします。
しかし「やっぱり無理」と諦め、鎖に繋がれた現状に絶望してしまうのです。
「エンドレス病み…?」という歌詞から、「この絶望的な状況が永遠に続いたらどうしよう」という不安感が読み取れます。
実はこの歌詞のあとにまふゆの笑い声が入っています。
これは「いい子モード」のまふゆと捉えて良いでしょう。
”もう諦めて笑うしかないまふゆ”と”愛想笑いを浮かべるまふゆ”の2つの人格が見えるようです。
他人には分からない葛藤
抱っこ 抱っこ いらない子だ~アドミニストレイター 嗚呼
この部分から「まふゆのバッググラウンド」が見えてきます。
「抱っこいらない子」というのは、抱っこをせがんでいるのに、してもらえない子供時代を指しているのでしょう。
加えて周囲から「優等生だから手が掛からない」と思われている現状も表していそうです。
子供時代&現在の状況を表現した見事なダブルミーニング歌詞です。
「いい子 いい子」の部分からは、まふゆの壊れかかった心が見えてきます。
まふゆはずっと優等生でした。常に周りから期待され、やって当然と思われてきたのです。
想像もできないほどの「頑張れ」を浴びせられ、期待に応えようと奮闘してきました。
しかし、本当はしたくないことをやり続けた彼女に限界が来ます。
キャパシティー以上の努力をすれば人間は壊れてしまうものです。まふゆの心はすでに「氾濫」しかけています。
また、アドミニストレーターは「管理者」を意味する言葉です。
まふゆの管理者である母親に対して「嗚呼」と嘆いているのが分かります。
母親への反抗
ランタイム ラグ~反抗のログ
片仮名の羅列は、それこそバグっている様子を表現しているように見えます。
ランタイムとは、プログラムの実行段階を意味します。
つまり歌詞にある「ランタイムラグ」は、まふゆが母親から言われたことを実行するまで掛かる遅延時間ということでしょう。
まふゆは「音楽をやりたい」という気持ちを押し殺して勉強をしていました。
本来の気持ちを無視してやりたくないことをする。そう決心するまでの時間を「ランタイムラグ」と称しているのでしょう。
ログは「履歴情報」のことです。
まふゆが模試をサボって遊園地にいったこと&隠れて音楽をやっていることが「母親への反抗」として残っています。
まだ落ちていく感情
左 右 行方も ぐるぐる 悲惨~イナイイナイ✕点
まふゆの感情は完全に行き先を見失ってしまいました。
”闇”に迷い、”病み”期に入った暗い心情が表現されています。
その次にある「イナイナイばあ」は、安易な言葉で励ましてくる周囲の人間の揶揄かもしれません。
勝手に自分の気持ちを分かった気になって、薄っぺらい言葉をかけてくる人たち。まふゆはそんな人間に対して強い拒絶心を抱いているのでしょう。
まふゆが本当にいたい場所とは
爛れ荒れ荒れ 悲哀 嫌嫌~暗闇マミレ理性
「爛れ」とは、抑制が効かずに乱れていくこと
まふゆの中で大きくなった「負の感情」は止まることを知らず肥大化してしまいました。
とっくに心はバグっているのです。
また「暗闇マミレ理性」という歌詞から、まふゆが保っていた理性が汚れていくのも分かります。
ストーリーを読めば分かりますが、まふゆは模試をサボったあの日に価値観が一気に変わったのです。
「しなきゃいけない」「演じなきゃいけない」と思っていたのが間違いだった。そう、まふゆは自我の芽生えを確かに感じています。
ニーゴメンバーと過ごす時間を「あたたかい」と表現したまふゆ。
壊れた心を再構築していく中で、きっと彼女は「本当にいたい場所」を見つけるでしょう。
まとめ
「バグ」の歌詞を考察してきましたが、このバグというのは「感情が行き場を失っている様子」を表したものに思えます。
人は誰しも二面性を持っているものです。
周りに見せている自分と本当の自分。時にどっちが本当の自分か分からなくなることもあるでしょう。
しかし、なりたい自分を抑え込んでまで無理をするのはいけません。
どうか本作の主人公のように狂ってしまうことがないように気を付けてください。
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